養殖用の水質センサーは、養魚池やエビ池の中に置いて、溶存酸素、水温、pHなどを一日中自動で測り、数値がおかしくなったらお知らせする機器です。池の水の溶存酸素とpHは1日のうちに大きく上下し、もっとも危険なのは真夜中から早朝であることが多く、人が一晩中池のそばにいることはできません。そのため、1日に1~2回ではなく、連続して測る必要があります。
池の管理をしたことがある人なら誰でも知っているとおり、魚の異変は夜明け前に起きがちです。前の晩までは何ともなかったのに、早朝になって魚が鼻上げしているのに気づく、ということがあります。水質センサーが省いてくれるのは、一晩中はらはらして、真夜中に何度も池を見回る手間です。以下、池を管理する立場から、どの項目を測るか、プローブがなぜ正確に測れなくなりやすいか、購入前に何を確認するか、データをどう使うかを説明します。
養魚池でいちばん測りたい項目は?
水質センサーは、項目が多いほどよいわけではありません。数字の一つひとつが、ある問いに答えるものであるべきです。水車を回すか?餌を少し減らすか?水を替えるか?まず、各項目と日々の管理との関係をはっきりさせてから、何を測るかを決めます。
溶存酸素:もっとも大事な項目
溶存酸素は、養殖の水質の中でもっとも重視される項目です。昼間は藻類が光合成をして水中に酸素を出します。夜になると日光がなく、藻類、魚やエビ、池底の微生物がみな酸素を消費して、溶存酸素は下がり続けます。そのため、一般的な養魚池の溶存酸素は、夕方がもっとも高く、夜明け前がもっとも低くなります。蒸し暑い日、曇りの日、風のない日、あるいは藻類が突然大量に死ぬ(藻類のクラッシュ)あとは、溶存酸素がさらに不足しやすくなります。餌をやった直後は魚やエビの酸素消費が増えるので、溶存酸素もそれにつれて下がります。
連続して測る利点は、夜中の2時に溶存酸素が下がり始めたときにそれが分かることで、早朝に魚が鼻上げしているのを見て初めて気づくことがありません。溶存酸素がどこまで下がると危険かは、魚種、サイズ、水温によって違います。地元の水産試験場や、飼料・種苗業者の推奨に従ってください。
水温:溶存酸素を読み解く鍵
水温が高いほど、水に溶ける酸素は少なくなり、魚やエビの代謝と酸素消費は大きくなります。米国ニューメキシコ州立大学の普及機関の資料には、11°Cの水は27°Cの水より、溶ける酸素が約40%多いという例があります。そのため、夏の夜は特に溶存酸素に注意が必要です。寒波が来るときは、水温そのものも見張るべきリスクです。FAOの養殖マニュアルも、溶存酸素を測るときは水温も同時に測ることを勧めており、2つの数字を一緒に見て初めて正確になります。
pH:1日の上下を見る。数字1つだけを見ない
池水のpHも溶存酸素と同じように、昼夜で変化します。昼間は光合成で二酸化炭素が使われてpHが上がり、夜は呼吸で二酸化炭素が出てpHが下がります。そのため、夜明けにもっとも低く、夕方にもっとも高くなるのが普通です。pHはアンモニアの毒性にも影響するので、1日1回ではなく連続して測り、傾向を見るのが適しています。
アンモニア態窒素:pH、水温と一緒に見る
アンモニア態窒素は主に、残餌、魚やエビの排泄物、池底の有機物の分解から生じます。水中のアンモニアには2つの形があり、魚やエビへの毒性が強いのは非イオン化アンモニアで、その割合はpHと水温が上がるほど増えます。同じアンモニア態窒素の測定値でも、pHが高く水温が高いときのほうがリスクは大きくなります。そのため、アンモニア態窒素は必ずpH、水温と合わせて判断してください。
オンラインのアンモニア態窒素プローブの多くは電極法で、アンモニア態窒素が少しずつたまる傾向を追うのに向いています。汽水や海水では、水中のナトリウムやカリウムなどのイオンが電極の読み取り値に干渉します。定期的に試薬法と照らし合わせることをお勧めします。正確な数字が必要なときは、やはり試薬または検査機関への依頼を基準にしてください。
電気伝導度と塩分:雨や補水のあとに特に顕著
電気伝導度と塩分は、水中の塩分の多さを表します。汽水の池では、大雨や淡水を引き入れての補水のあとに、塩分が短時間で変わることがあります。淡水の池では、電気伝導度から水が少しずつ「濃く」なっていないかが分かります。海水や汽水の電気伝導度は淡水よりずっと高く、プローブの測定レンジは水域に合わせる必要があります。
藍藻とクロロフィル:「水の色が変わった」を数字にする
水の色を見るというのは、実は池の中の藻類を見ているということです。藻類が少なすぎると、昼間の酸素の生産が足りません。藻類が濃すぎたり、突然大量に死んだりすると、溶存酸素が急に下がることがあります。クロロフィルと藍藻のセンシングは、「水の色が変わった」を1本の傾向線に変え、早めに気づけるようにします。
YenProtekのAquaPackを例にすると、測定できる項目は溶存酸素(DO)、pH、アンモニア態窒素、水温、電気伝導度、塩分、藍藻、クロロフィルで、水域のタイプ、養殖魚種、予算に応じて自由に組み合わせられ、必要なセンサーだけ買えます。
プローブが正確に測れなくなりやすいのはなぜ?
水質センサーを設置したことがあっても、結局は表示の数字を信じなくなる養殖業者は多く、その原因は通常、次の3つです。
プローブに藻が付く:生物付着
養魚池は水の栄養分が多く藻類も多いので、水に浸かったプローブにはすぐにぬめり、藻、さらには小さな貝まで付きます。フランス海洋開発研究所(IFREMER)の研究者による整理では、生物付着は1週間以内にセンサーの測定品質に影響する可能性があります。プローブが汚れると、数字は少しずつずれていきます。溶存酸素の場合、プローブが汚れると読み値が高く出ることがあり、「まだ足りている」ように見えて、エアレーターが動かない。これがもっとも危険な状況です。
校正しなければ、数字はただの数字
米国南部地域水産センター(SRAC)の溶存酸素測定の説明ははっきりしています。機器に表示される数字が正しいのは、機器が校正されていて、測り方が正しく、プローブがきちんと手入れされているときだけです。pH電極は長く使うと応答が悪くなり、米国地質調査所(USGS)の測定マニュアルは、2種類以上の標準液で校正することを求めています。溶存酸素のメンブレンキャップもpH電極も消耗品で、劣化するので交換が必要です。pHのガラス球が割れたら修復できません。一定期間ごとに、ハンディ型の機器で同じ位置の読み値と照らし合わせることをお勧めします。
設置場所が悪い:測れているのは魚やエビが感じている水ではない
同じ池でも、溶存酸素は深さ、位置、時間によって変わります。一般に、池底は表層より低く、風上は風下より低く、岸に近い読み値も池の中央より低くなります。SRACは、ハンディ機器で測るときは、岸から少なくとも約60 cm離れ、水面下約30~45 cmで測り、エアレーターのそばでは測らないよう勧めています。固定式センサーも同じ考え方です。水車の真正面や取水口のそばには付けず、同じ位置に固定してこそ、日々の傾向が見えてきます。1回の読み値の正確さを追うより、同じ位置、同じ時間帯の傾向のほうが参考になります。
AquaPackの付着への対処
AquaPackは循環式自己洗浄の設計(実用新案登録 第M617481号)を採用しています。測定の前に水サンプルを処理して、浮遊物を減らし、微生物の付着を抑えます。測定の後は自動で洗浄プログラムを動かし、センサーヘッドに付いた微生物を除去して、バイオフィルムの発生を減らします。これにより、水に入ってプローブをブラシで磨く回数は減らせますが、保守が一切不要になるわけではありません。センサープローブは今後も定期的な校正が必要で、溶存酸素のメンブレンキャップも定期的な交換が必要です。
購入前に確認したい6つのこと
| 確認すること | メーカーに聞ける質問 |
|---|---|
| 1. 測る項目 | 必要な項目だけ選べますか?あとから追加できますか? |
| 2. 淡水か、海水・汽水か | 自分の池の塩分で、プローブの測定レンジは足りますか?アンモニア態窒素は塩分のある水でも正確ですか? |
| 3. 清掃と校正 | プローブの清掃と校正はどのくらいの頻度で必要ですか?消耗品はどのくらいで交換しますか? |
| 4. 電源と通信 | 池のそばに電気がなく、電波も悪くても使えますか?回線が切れたときデータは消えませんか? |
| 5. 警報 | 数値が異常になったとき、どうやって知らせてくれますか?しきい値は自分で設定できますか? |
| 6. 制御につなげられるか | 溶存酸素が低いとき、水車を自動で回せますか?別に何を買う必要がありますか? |
1. 測る項目
まず溶存酸素と水温から始め、池の課題に応じてpH、アンモニア態窒素、塩分、藻類を加えます。別々に買えて、あとから追加できる設計のものを選ぶと、無駄な出費になりにくくなります。
2. 淡水か、海水・汽水か
ここがいちばん買い間違えやすいところです。淡水用の電気伝導度・塩分プローブを海水や汽水に入れると、測定レンジをそのまま超えてしまうことがあります。溶存酸素の読み値も塩分に応じた補正が必要です。電極法のアンモニア態窒素は、塩分のある水では干渉を受けます。バナメイエビ、サバヒー、ハタなど、汽水または海水の魚種を養殖する場合は、購入前に池の塩分をメーカーにお伝えください。
3. 清掃と校正
自動洗浄があるか、人の手での清掃はどのくらいの頻度か、どう校正するか、消耗品はどのくらいで交換するか、をはっきり聞いてください。水に入ってプローブをブラシで磨く人手と時間も、コストに入れて計算してください。
4. 電源と通信
養魚池のそばにコンセントがなく、携帯の電波も不安定なことはよくあります。機器が太陽光で使えるか、通信方式がいくつから選べるか、回線が切れたときにデータをいったん保存して接続が戻ってから再送するかを確認してください。通信方式の違いは、〈IoT通信技術の比較〉が参考になります。
5. 警報
しきい値を自分で設定できるか、どんな方法で通知されるか、スマートフォンの画面が分かりやすいかを確認してください。AquaPackは、設定したしきい値に応じて、数値が異常になるとアプリのプッシュ通知、SMS、Emailなどでお知らせします。アプリとクラウドプラットフォームは多言語の画面に対応しています。
6. 制御につなげられるか
測るだけで制御しないと、真夜中に通知を受けても、起きて水車を回さなければなりません。センサーが制御機器と連動できるか、どんな機器が必要か、大型モーターをどう配線するかを確認してください。
測ったデータをどう使うか?
警報:スマートフォンが真夜中の見回りを代わりにしてくれる
まず魚種と養殖の段階に応じて、溶存酸素、水温、pHなどの項目のしきい値を設定しておくと、数値が超えたらすぐスマートフォンに通知が届きます。傾向にも気を配ってください。同じ時間帯の溶存酸素が何日も続けて下がっているほうが、ある1回の低い値よりも注意に値することが多いです。
餌やり、換水、エアレーター運転を調整する際の参考
水質データは、餌やりの調整、換水、エアレーターを動かす判断の参考にできます。早朝の溶存酸素が続けて低い、アンモニア態窒素が少しずつたまる、藻類の指標が突然変わる、といったことは、給餌量、換水、水車の回し方を見直すサインです。最終的にどうするかは、現場で魚やエビの食べ方や動きを観察して判断してください。
溶存酸素が下がったら水車が自動で回る:Smart Control Boxとの組み合わせ
AquaPackとSmart Control Boxを組み合わせると、スマートフォンで「溶存酸素が設定値を下回ったら、エアレーターや水車を動かす」というルールを設定できます(水質データに基づく自動制御には、LoRa通信版の購入が必要です)。エアレーターや水車などの大出力モーターや三相モーターは、有資格の電気工事士が外部回路で配線します。
使い方の安全上の提案が2つあります。夜間と早朝は溶存酸素がもっとも下がりやすい時間帯なので、スケジュール設定でこの時間帯は水車を運転し続けるようにしてください。溶存酸素のルールは、溶存酸素が低いときに設備を「追加で動かす」ことだけを担当させ、水車を止めるために使わないでください。また、プローブが汚れると溶存酸素の読み値が高く出ることがあるので、プローブは定期的に清掃し、ハンディ型の溶存酸素計で読み値を照らし合わせてください。
停電時:センサーに電気があっても、水車にあるとは限らない
現場全体が停電すると、エアレーターと水車がいっしょに止まり、溶存酸素がすぐに下がることがあります。これは水質センサーでは防げない、もう一つのリスクです。停電にまず気づく方法と、バックアップの準備については、〈養魚池の停電は一大事〉をご覧ください。YenProtekの停電警報モジュールのうち、停電後も警報を送れるのは、SIM通信を内蔵したNB-IoT版と4G版です。
既存のシステムとつなげる
すでに自社の管理システムがある場合、AquaPackはAPIとMCPを提供でき、監視データを既存の管理システムやAIツールにつなげます。各種農業用センサーの全体像を知りたい方は、〈農業用センサーの種類〉をご覧ください。
よくある質問
Q1:水質センサーがあれば、自分で試薬を使って測る必要はもうありませんか?
必要です。オンラインセンサーの強みは、連続して測れることと、変化を早く見つけられることです。試薬とハンディ機器は、定期的に照らし合わせて、読み値がずれていないかを確認するために使います。アンモニア態窒素は、汽水や海水ではイオンの干渉を受けるため、定期的に試薬法で照らし合わせることをいっそうお勧めします。
Q2:1日に何回測れば十分ですか?
SRACは、高密度の養魚池では、養殖シーズン中は少なくとも毎日、夜明けと夕方の2回測ることを勧めています。暑い日は、夜に1~2時間おきに測る必要があるかもしれません。人手では難しいので、スケジュールに従って自動で測定し、データを自動でアップロードする機器が必要になります。
Q3:自己洗浄があれば、保守は要りませんか?
いいえ。循環式の自己洗浄は人による清掃の回数を減らせますが、センサープローブは消耗品で、定期的な校正が必要です。溶存酸素のメンブレンキャップは定期交換が必要で、pHのガラス球は壊れたら修復できません。
Q4:汽水や海水の池でも使えますか?
海水と汽水の電気伝導度と塩分は淡水よりはるかに高いため、プローブの測定レンジは水域に合わせて確認する必要があります。AquaPackを汽水や海水で使う場合は、プローブの測定レンジを先にお問い合わせください。池の塩分と養殖する種類をお知らせいただければ、そのうえで構成をご提案します。
Q5:溶存酸素が低いとき、水車を自動で回せますか?
できます。LoRa通信版を購入し、Smart Control Boxと組み合わせると、溶存酸素が設定値を下回ったときにエアレーターや水車などの設備を自動で動かせます。大出力モーターや三相モーターは、有資格の電気工事士が外部回路で配線します。
Q6:養魚池のそばに電気がなく、電波も悪くても設置できますか?
できます。AquaPackは標準でソーラー電源で、商用電源や外付けバッテリーにも接続でき、水回りや電気の配管・配線工事は不要です。通信は現場の電波に応じてLoRa、NB-IoT、4G、Wi-Fiから選べ、ネットワークが不安定なときはデータをいったん機器の中に保存します。
池を守る水質センサーをお探しですか?
水質センサー選びで大事なのは、項目が多いことや仕様が立派なことではなく、正確に測れること、保守を続けられること、異常のときにきちんと起こしてくれること、そして必要なら水車を回してくれることです。AquaPackは、実用新案登録の循環式自己洗浄を備えた水質センシングシステムで、1年間の保証が付いています。保証期間中に故障した場合は新品を直接お送りして交換します。実際の保証条件は見積書に従います。
スマートフォンとクラウドプラットフォームの画面を先に見たい方は、デモアカウントを申請できます。水域のタイプと養殖魚種をお知らせいただければ、推奨構成とお見積もりをご提案します。
参考資料
- FAO, Improving Pond Water Quality(FAO Training Series)
- Sallenave, R., Understanding Water Quality Parameters to Better Manage Your Pond(New Mexico State University, Guide W-104)
- Hargreaves, J.A. & Tucker, C.S., Measuring Dissolved Oxygen Concentration in Aquaculture(SRAC Publication No. 4601, 2002)
- U.S. Geological Survey, Measurement of pH(Techniques and Methods 9-A6.4)
- Delauney, L., Compère, C. & Lehaitre, M., Biofouling protection for marine environmental sensors(Ocean Science, 2010)
- A New Ammonium Smart Sensor with Interference Rejection(Sensors, 2020)